水彩画を描くなら「紙」にはこだわるべき理由 水彩紙の選び方についても解説 | 毎日水彩画

アナログで描いた水彩画日記 - Daily watercolor painting

水彩画を描くなら「紙」にはこだわるべき理由 水彩紙の選び方についても解説

★本サイトは一部にプロモーションが含まれています★


水彩画を描くとき、どのような紙を使って絵を描いているでしょうか?

実は水彩画は、使う紙によって描きやすさや色の出方、絵の仕上がりが大きく異なってきます。

紙を変えただけで、きれいに描けるようになることも珍しくはなく、水彩でベストな絵を描きたいのであれば、紙の質には絶対にこだわるべきだといえるでしょう。

今回は、水彩画を描くときに紙にこだわった方が良い理由と、紙の選び方について解説します。

水彩画を描くときに紙にこだわった方が良い理由について

遊びで水彩を描くのならばともかく、本格的な水彩画を描くのであれば使う紙には絶対にこだわるべきです。

その理由について以下、まとめてみました。

水彩用の紙は耐久性が高い



子供の頃、学校の授業で水彩画を描いたことがある方は少なくないと思いますが、 学校の授業では価格の安い画用紙を使うことがほとんどです。

一方で、本格的に水彩画を描いている人は、「水彩紙」と呼ばれる水彩専用の紙を使用しています。



水彩専用の紙を使う理由ですが、水彩絵の具はたくさん水を使って絵を描きます。

紙は細かい繊維を絡み合わせて作られていますが、 水をたくさん吸うとその繊維が膨張して伸び、ところどころ繊維の結合がほどけて毛羽立ったり、破れやすくなります。

加えて絵画では、紙の表面を多少なりとも摩擦しますから、紙が弱いと描いているうちにボロボロになってしまうのですよね。



しかし水彩用の「水彩紙」は、安価な紙とは違って厳選された素材を使って製造されているため、 水による膨張や摩擦に何度もさらされたとしても、長くきれいな状態を保つことができます。

紙の状態を気にしなくても済むぶん描くことに集中できますし、 紙がボロボロにならないため、絵がキレイに仕上がりやすいというメリットもあります。

水彩の技法が使いやすい

水彩には、ぼかしやにじみなど水の性質を生かした「技法」がたくさんあります。



水彩ならではの魅力を生かした絵を描きたいのであれば、積極的に利用したいところですが、 この水彩の技法、安価な紙ではきれいに表現できないことが多いです。

理由は、安価な紙ではたくさんの水を使った絵画に耐えられないこと、 また紙質によって水や絵の具の顔料のしみこみ方、広がり方、水の乾き方などが異なるからです。



実際に描いてみるとわかりますが、高品質な水彩紙であれば、水彩のありとあらゆる技法をベストな形で使うことができます。

色のにじみや発色がとてもキレイに出ますし、複数の色を使ったグラデーションなどもとても滑らかに表現できます。

一方で安価な紙だと、絵の具をぼかすことすらキレイにできないことも。

同じように技法を使ったとしても、安価な紙と水彩紙とでは仕上がりが大きく異なってくるのですよね。

水彩の技法を生かして絵を描きたいのであれば、高品質な水彩紙を使うべきだといえるでしょう。

保存性が高い

安価な紙と水彩紙とでは、保存性が大きく異なります。



例えば、低品質なパルプ(草や木材などの繊維)が使われることが多い安価な紙には、 紙を劣化させる原因となる「リグニン」も多く含まれます。

リグニンには光や酸素に弱いという性質があるため、 紙に含まれるリグニンの含有量が多いほど、短期間で紙の劣化が進んでしまいます。

紙が劣化すると黄ばみが出たり、紙自体の耐久性が低下して脆くなってしまうというわけです。



一方で、水彩紙には良質な木材パルプや、より品質の高い水彩紙にはコットンが使われています。

そういった水彩紙では、限りなく含まれるリグニンの量が少ないか、もしくはリグニンを含まないため、 安価な紙よりも長持ちしやすいという特長があります。

もちろん保管する環境によっては、高品質な水彩紙であっても短期間で劣化が進むことはありますが、 きちんとした環境で保管しているのであれば、長期間良い状態を保つことができます。



せっかく水彩画を描くのですから、できるだけキレイな状態を保って絵を長持ちさせたいですよね。

であれば、保存性の高い水彩紙を使うべきです。

水彩紙の選び方について解説

水彩を使った絵画に最適な、水彩紙。

水彩画を描くのであれば、できるだけ水彩紙を使いたいところですが、水彩紙と一口に言ってもピンからキリまで様々な製品があります。

水彩紙の種類によって描き心地や仕上がりが大きく異なってくるため、描く作品によって異なる水彩紙を使い分けたいところです。

というわけで以下、水彩紙の選び方のポイントについてまとめてみました。

紙の原材料をチェックする

できるだけ描きやすく、また保存性の高い水彩紙を使いたいのであれば、紙の原材料をチェックしましょう。



前項でもご説明したように、紙は様々な材料を使って作られています。

何が使われているのかによって紙の性質が変わってくるため、 良い紙を使いたいのであれば原材料をチェックすることです。



もしあなたが高品質な水彩紙をお探しであるのなら、コットン100%の水彩紙を選ぶことをおすすめします。

その理由ですが、コットンのみを使用して作られた水彩紙の成分は、「セルロース」と呼ばれる繊維が主です。

セルロースは吸水性が高く発色にも優れること、またコットン100%の水彩紙はリグニンをほとんど含まないため、 劣化しづらいという特長があります。



コットン以外の原材料…例えば木材パルプを使用した水彩紙も、 品質の良い製品であればリグニンをできるだけ除去してあるため、セルロースの割合は大きいです。

とはいえセルロース以外の成分も含まれているため、その分コットンに比べると吸水性が劣ること、 また保存性の面でも劣ります。

描き心地もかなり違ってきます。



ですので、品質の高い水彩紙を使いたいのであれば、コットン100%の水彩紙を選びましょう。

コストを抑えたい場合でも、できるだけコットンの使用割合が高い水彩紙を選ぶことをおすすめします。

紙の厚みも大切

水彩紙を選ぶときには、紙の厚みを見ることも大切です。



ほとんどの水彩紙には190g/m²、300g/m²といった具合に、1平方メートルあたりのグラム数が書かれています。

この数字が大きいほど、厚みのある水彩紙であることを意味しています。



当然ながら厚みのある水彩紙のほうが耐久性に優れること、また吸水性にも優れるため、水をたくさん使うことができます。

またたくさんの水を使って描いても紙がでこぼこと波打ちにくいため、描きやすく色ムラもできにくいです。

紙に厚みがあると、保管時にうっかり紙を折り曲げたりしづらいという利点もあります。



上記のような理由より、きちんとした作品を描く場合は、厚みのある水彩紙を選ばれることをおすすめします。

300g/m²以上が理想です。

紙の目の大きさを選ぶ

水彩紙は、紙の目の大きさによって「極細目」「細目」「中目」「荒目」といった具合に、パターンが分類されています。



表面がザラザラしているように見える紙、ありますよね。あれが紙の目です。

極細目にもなると、紙の目はとても細かくつるっとした感じに、中目、荒目…となるにつれて、目が大きく粗くなっていきます。

当然ですが紙の目は、作品の表現に大きく影響します。



例えば「荒目」の紙は、紙表面のくぼみが大きいため、絵の具や鉛筆などで描いたときにざらついた感じになりやすいです。

勢いある表現を出しやすい反面、緻密な絵を描くには向いていません。

一方で「細目」の紙は紙表面のくぼみが小さいため、細かな描画による表現が行いやすいです。

どのような絵も描きやすいのですが、おとなしい印象になりやすいこと、また筆が紙に引っかかりにくいために描きづらく感じる方もいるようです。



どれを選ぶべきか?は、どのような絵を描くか、また個人の好みにもよるため一概にどうとは言えませんが、 とりあえずは中目を選んでおくと失敗が少ないです。

ただし製品によって、同じ「中目」であっても目の大きさが異なるため、自分の描き方にあった紙を見つけるには実際に使ってみることです。

とにかく高品質な水彩紙を紹介

とにかく高品質で描きやすく、
なおかつ保存性の高い水彩紙を探している。

そんな方に向く、クオリティの高い水彩紙をご紹介します。

高品質な水彩紙は価格が高いですが、それだけのことは十分にありますので、 水彩を描いているのなら試してみて損はないと思います。

アルシュ

最高級水彩紙…と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、アルシュです。 トップクラスともいえる100%コットンの高級水彩紙で、荒目・細目・極細がラインアップされています。

とにかく発色が良いこと、またぼかしやにじみなどあらゆる水彩画の技法を上手く表現できる水彩紙です。

顔料が染みつきやすい性質を持つため、一度描くと色を抜き取るのは難しいのですが、 品質の高い水彩紙を使いたいのであれば、一番に候補にあがる紙だといえるでしょう。

高品質だけあって価格もなかなかのものなのですが、ここぞというときに使いたいです。

ラウニー ラングトン プレステージ

ラウニー社の「ラングトン・プレステージ」と呼ばれる製品も、コットン100%の高級水彩紙です。 英国王立水彩画協会の推薦を受けている製品で、紙の目は荒目・中目・細目をラインアップ。

こちらもアルシュと同様に色抜きはしにくいのですが、水彩のあらゆる技法が表現しやすく、本番の水彩作品への利用に向いています。

価格がアルシュよりも安いため、アルシュだと気軽に買えないという方におすすめです。

なお、ラウニー社の水彩紙には「ラングトン」という製品もありますが、 「ラングトン・プレステージ」とは異なる水彩紙であるため、購入時は間違えないようにご注意ください。

ホルベイン ウォーターフォード

コットン100%の水彩紙なら、ホルベインのウォーターフォードもおすすめです。 英国の歴史的由緒ある、St Cuthberts製紙工場で作られた水彩紙です。

コットン100%なだけあって、ぼかしやにじみといった水をたくさん使った技法が使いやすいこと、 また色の出方もとてもきれいです。

アルシュなどと同様、塗った絵の具の色抜きはしづらいのですが、 価格がコットン100%にしてはお手頃であるため、高級紙の中では気軽に使える製品です。

私自身も、きちんとした作品を描くときによく使用しています。

ミューズ ランプライト

ここまでご紹介した製品のように、リフティング(色抜き)できない水彩紙が苦手な人には、ランプライトが向いているかもしれません。 お手頃水彩紙で有名な「ワトソン」や「ホワイトワトソン」と同じような性質を持つ、 リフティング(色抜き)がしやすい水彩紙です。

ワトソンやホワイトワトソンの上位版と考えるとわかりやすいでしょうか。

コットン100%なので吸収性も耐久性にも優れていること、 また先にも述べたようにリフティング(色抜き)がしやすいため、水彩初心者にも使いやすいはずです。

高級水彩紙の割にお手頃であるところも〇。

若干黄味がかった色をした紙であるため、その点が気になる方は注意が必要ですが、 実際に描いてみるとそれほどは気にならないと思います。

本番の水彩作品用におすすめ

高品質な水彩紙は、そうでない水彩紙と比較してお値段が高めです。

なので毎回の絵画に利用するのは負担だという方もおられると思いますが、 描き心地が安価な紙とは全然違います。

仕上がりも大きく違ってきますので、ここぞというときの本番作品にはぜひ使ってみて欲しいです。

参考にして頂ければと思います。


関連記事







ABOUT

ページトップへ